同じ時代を

CHAGE&ASKAのASKAが1999年にソロでリリースした『KICKS』というアルバムは、かなり実験的なものでした。当時のインタビューで「ロックとクラブミュージックの融合を試みた」というようなことを語っていましたが、確かに従来のJ-POPとは全く違う洋楽的なサウンドに興奮したものです。

中でも私が一番好きだったのは、1曲目に収録されている『NO WAY』という曲。ロックをベースとしたサウンドに、ラップ調の歌い方や幻想的な電子音使いなどがミックスされていて、リリース当時はその新しくて実験的なサウンドにとことんハマりました。

そしてもう1曲、ハマって何度も聴いた曲があります。7曲目に収録されている『同じ時代を』という曲です。フォークロックとクラブサウンドが融合したようなこの曲では、ASKAの抑えた歌唱法がデビュー当時のストレートな歌声を彷彿とさせます。風を切りながら流れていくようなサウンドに、情緒豊かな歌詞が綴られた名曲です。





『NO WAY』はサウンドが好きなのに対して、『同じ時代を』は歌詞が好きです。ASKAが若い頃にミュージシャンになるために上京した時の話から始まり、その頃がもうすっかりと懐かしくなってしまった、こうやってどんどん流れゆく時間の中で僕たちは同じ時代を共有しているんだよねって感じの歌詞です。


誰かの肩にあたらぬように ギターを持つ
流れる風景が落ち着いて ドアが開く
吹き込むような風をわけて 降り立った街
あのころがもうすっかりと 懐かしい



1979年にチャゲ&飛鳥としてデビューしたASKA。「夢を抱いて上京する」という言葉が一番似合っていた時代のように感じます。フォークソングの時代。「田舎者だからといって東京モンには負けねぇ!」という気持ちで上京したと相方のCHAGEが言っていましたが、そうは言ってもどことなく肩身の狭い気分だったのではないでしょうか。

電車の中で誰かの肩にあたらないように気を遣いながらギターを抱え、ドアが開き、東京の風をかき分けながら降り立った青年の姿が浮かぶ見事な歌詞ですよね。どことなくSupreme Teamの『그대로 있어도 돼(そのままでいてもいい)』のE-SENSの歌詞とかぶります。


昔と同じように とても熱い息を吐くけど
あの頃は勝とうとする気持ちだけだったね
幸せは あの女性の手首で輝いていた
Christian Dior
みんな着ている服によって 性格が変わる
それがこの街の最初の印象
あの頃 俺が目標にしていたのは
食べて生活していくこと 次の段階のあらゆること



同じように夢を抱いて田舎からソウルに出てきた青年の気持ちが読み取れます。この曲の全体の和訳は、本家サイト『BLOOMINT MUSIC』内にあるこちらの記事にて、字幕付きMVと共にお楽しみください。







今日、私の祖母が亡くなりました。96歳の大往生でした。

子供嫌いだった祖母とは小さい頃はあまり交流がなく、私が23歳で留学から帰国してから実家を26歳で出るまでの3年間、急速に関係が縮まりました。私の実家はその当時いろいろと訳ありで、修羅場のたびに祖母の家(実家から徒歩数分)に駆け込んでました。祖母は緑茶が大好きで、いつも何杯も飲みながらお饅頭をつまんでいろんな話をしたな。

この前の水曜日に危篤になり、そこから3日後の今日、息を引き取りました。今頃は14年前に亡くなった祖父と再会をしているのかしら。今日、この『同じ時代を』について書いたのは、祖母を亡くしたことに対する喪失感の中で、ふとこの歌詞の部分を思い出したからなんです。


いつの日か君や僕を 誰も知らない時がくる
僕たちが昔の人たちを 知らないように
滴が床に落ちるような時間で 僕らは生まれ合った
幸せだとか 悲しみだとか分け合いながら



滴が床に落ちるような時間。長い人類の歴史の中で、私たちの一生なんてその程度の時間なんです。私たちはそんなわずかな時間の中で、幸せや悲しみを共有しているんですよね。同じ時代に生きているって、そうやって考えるとすごい奇跡なんだと思います。

いつか私のことなんて誰も知らない時代が来る。今は家族や友達がいるけど、いつか全員死んで、その子供たちも死んで、誰も自分たちを知らない時代が来る。私たちが自分のおじいちゃんのおじいちゃんのことや、その友達のことなどを全く知らないように。だから、今のこのわずかな時間を共に生きているって本当にすごいことなんだと思う。

祖母の96年の人生のうちの3分の1を私も共有したわけですが、同じ時代を生き、幸せとか悲しみを共有できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。そして今自分の周りにいるすべての人たちに対して、感謝の気持ちを忘れないようにしたいと思います。イラッとしたりして忘れることもあるかもしれないけど、そんな時はこの曲を思い出してみよう。

おばあちゃん、何十年後かにまた一緒に緑茶飲もうね。

あ、ちなみに緑茶って本当に健康と長寿の秘訣だと思いますよ。1日に何杯も緑茶を飲み続けた祖母を見て、つくづくそう思います。っていう軽い感じのオチね。

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